ショッピングは「行為」から「体験」へ  大ヒットブランド「BUBBLES」からみる新時代のアパレルマーケティング戦略

2016年02月25日

休日に東京・原宿を明治通り沿いに歩くと、大きな商業ビルの間に、女子中高生が行列を作っている光景が見られます。先頭にあるのは、雑貨やファッションアイテムを展開するアパレルブランド「BUBBLES(バブルス)」の店舗。

「液体の入ったスマホケース」やテグスを編み込んだ「タトゥーチョーカー」など、原宿系を中心とした若い女性に向けて、数々のヒットアイテムを世の中に送り出しています。

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しかしこの「BUBBLES」の直営店は、この世に3カ所しかありません。どのお店も小さいため、品揃えも限られています。

そんな“街の小さな雑貨屋さん”は、なぜ日本中のティーンが憧れるヒットメーカーとなったのでしょうか。その理由は、ショッピングを“一瞬で終わる行為”から“SNSでシェアできる体験”へと進化させたからだと私は思います。

 

店舗の前に”自撮り待ち”の行列

稀少な「BUBBLES」の店舗のうち、旗艦店とも言える原宿店は、全国の少女たちの憧れの対象として相応しく、ロマンチックでメルヘンな世界観を模しています。明治通りを神宮前交差点から少し進んだあたりで、どこまでも続くようなアスファルトの道路の脇に、芝生と薄ピンクのワゴン、そして白くて小さな店舗が突然現れるのです。東京のど真ん中なのに、そこだけはレトロなアメリカ映画に出てくる郊外の様子を作り上げています。

こちらの店舗は、訪れるティーンたちにとって、買い物をするだけの場所ではありません。憧れのブランドに立ち寄った証拠として、そしてその日、原宿に遊びに来た記念として、写真を撮るための “自撮りスポット”なのです。夏休み期間や土日に店舗を訪れると、お店の前で自撮りをする女子中高生たちで行列ができていることもあるんです。

また、彼女たちがお店に来たがる理由は、これだけではありません。

 

店員は現役の読者モデル

店舗に一歩入ると、ブランドのイメージと完全にマッチした“ゆめかわいい”系の店員さんが迎えてくれます。多くは読者モデルさんやSNS上の有名人だそうです。憧れの人にアイテムを選んでもらったり、コーディネートの相談に乗ってもらえるお店って、それだけで来る価値がありますよね。

渋谷発祥の文化「カリスマ店員」は、原宿系ブランドでも大活躍しているのです。「BUBBLES」の他にも、古着店から大型SPAへと転換した「WEGO(ウィゴー)」などでは、同じくSNSや雑誌上の有名人をショップ店員として起用しています。

ティーンのストリートファッションにおけるカリスマは、作り手側ではなく、自分と同じ立場で洋服に接している”消費者側のプロ的存在”なのかもしれません。プロのモデルではなく、消費者の代表である読者モデルさんたちは、ティーンにとっての会いに行けるカリスマなのでしょう。

 

ショッピングを「体験」にしたお店

「BUBBLES」の店舗の価値は、服を買うことにプラスして、写真を撮る、憧れの人に会うという3つであることがわかります。“「BUBBLES」でお買い物をする”という行動は、店舗に足を運び、お金を支払った瞬間に終わってしまうものではありません。店舗に向かい、写真を撮り、憧れの店員さんと話し、好きな洋服を買い、家に帰ったあと撮った写真をシェアするまで続くのです。

ファッション市場の落ち込みは、若者の欲望が所有から経験へと変わったことが原因の一つであると、たびたび語られています。「BUBBLES」は、世界観を作り上げ、店舗の希少価値を高めることで、買い物という”行為”をするのではなく”体験”するブランドとして、人気を得ているのではないでしょうか。